農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【8月に読んだ本】

夏休みは、宮部みゆきの三島屋変調物語を読み続けた。

 

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と言っても、まだ3巻までしか読んでいないけれど。

2巻目は『あんじゅう』。

三島屋変調物語事続『あんじゅう』

この世のものでなはいもの、陰でうごめき陰でこそ存在できるものでありながら、愛らしさを感じさせるくろすけ。ふるふると震えてこちらを伺うくろすけと心優しい老夫婦の物語。想うがゆえに離れなければならない切なさが涙を誘う。
他に、「神様」と呼ばれるものと人間の子どもとの関係に心温まる話もあれば、本当に怖いのは普通の顔をして普通に生活している人々の心の闇だと思わされる話と、緩急があって面白かった。


三島屋変調物語参之続


「くりから御前」は、山津波で生まれ故郷をなくした男が語るやさしい話。
津波に飲まれ行方不明になった2人の幼馴染が、それぞれ別々の日に夢に現れかくれんぼをする。夢の中のかくれんぼで幼馴染を見つけた次の日、その行方不明になった幼馴染が見つかる。
自分たちだけがわかること、そんな不思議な体験を通して身近な人の突然の死を自然と受け入れることができる。そして、突然の天災で命を奪われた方も、生き残った人の心の悲しみに触れることで自分が生きた証を得ることができ、あの世へと渡っていける。
「怪談」と言いながら、ただ不気味で恐ろしいだけでなく、人のぬくもりや縁の不思議を感じさせてくれる話が挟まれているおかげで読み進めることができている。


怪談から少し離れて、ゴーシ先生の本を読む。

ばぁばの巻きずし


食卓にまつわる3つのおはなしが収められている。
1つめの「ばぁばの巻きずし」は、ゴーシ先生の息子さんとお母様とのエピソードから生まれたお話。
ゴーシ先生のお母様が朝早くからお弁当を作って福岡まで来てくれたこと。
そのお弁当にお母様の愛情が溢れんばかりに詰まっていることに気付いて、泣きながら食べたこと。
いつかゴーシ先生の本で読んだエピソードも思い出されたし、私の祖母も、何かあるといつもちらし寿司を作ってもてなしてくれていたことを思い出した。

2つめの「お母さんのハンバーグ」は、ゴーシ先生の食育の講演会では必ず聴くお話。
我が家もこの春、一人暮らしを始める長男の旅立ちに合わせて、大好物の唐揚げを作って、家族で食卓を囲んだ。
長男はこれから始まる新しい世界へのわくわく感が溢れていて、感慨深いのは親だけで、このお話のような顛末とは程遠かったのだけれど、それでもあの時、鼻の奥がつんとなって涙が溢れそうになるのを誤魔化しながら唐揚げを頬張ったことを思い出した。

3つ目は「お父さんのチャーハン」。
毎朝お父さんが作ってくれる朝ご飯。
けっして「おいしい」とは言えないご飯を、お父さんは毎日作り続ける。
些細なことでお父さんとケンカして冷たい態度を取り続ける高校生の「私」。
家から離れて初めて、毎日ご飯を作り続けることの大変さを知る。

食卓に並ぶ食べ物には、もう一つの命、作ってくれた人の命の時間、が込められている。
料理は得意ではないけれど、料理を通して、食卓に並ぶ品々を通して、子どもたちに私の命の時間をかけてあげられるのならば、それは、私にしかできない最高の愛情表現である。
食卓だけではなく、毎日のお弁当もそう。
誰かを想いながら、今日も台所に立っている、そのことに気付かせてもらう。

さて、9月はどんな本に出会えるかな。