農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【食事の美学、哲学を書いた本 『一汁一菜でよいという提案』】

最近読んだ本。

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「一汁一菜でよいという提案」

著:土井善晴
出版:新潮文庫

帯に「家庭料理に革命をもたらすベストセラー」なんて書いてあるけれど、
家庭料理のレシピ本なんかではなくて、著者である土井氏の家庭料理に対する思想が書かれ、実際土井氏が食したある日の「一汁一菜」のお膳の美しい風景が載っています。

日本人の古来からの食事について紐解いていくと、「一汁一菜」に行きつくのだとか。
今の家庭料理というものは、戦後体の小さかった日本人が、欧米のように動物性たんぱく質を多くとるように、そして食の多様化が豊かさの象徴のように謳われてきた結果だそう。
なるほど、そう考えてみると、我が家の食卓も、毎日肉料理、魚料理のどちらかをメインに、副菜、小鉢、スープや汁物と、頭を悩ましている。
そういう食卓が理想だという価値観を自分自身が持っているだけでなく、数が多いほどよくて、量が多いほどおもてなしに値すると信じている家族を持っている以上、普段の食卓も、誰かを招いての食卓も、野良仕事の時の食卓も、とにかくいつもいつも何を作るか、どれくらい作るかに追われているのです。だから、料理が好きになれないのかも。

この本を読むと、今ある旬のものを、その素材が持つ良さを生かして、シンプルに料理すること。このことが、最高に贅沢で、最高に美しく、最高においしいのだろうなということが分かってくる気がします。
気負いなく基本の食事のスタイルを持つこと。そのことにより秩序と余裕が生まれ、暮らしの楽しみが生まれてくるのです。

シンプルな生活に憧れて、自分たちの手で育てたお米と野菜を、自分たちを応援してくれる人たちと分かち合うことに生きる喜びを見出し始めている今の私にとって、土井氏の伝えようとする食事の思想はよく理解できるし、実のところ、そうやって生活すること、食べ物を口にすることこそが、もっとも贅沢なことのように感じています。


私の場合、あと数年は今の生活スタイル。
でもだんだん、シンプルに。
大切なものを吟味して、きれいに整える。

食事と生活スタイルは、その人の価値観となってあらわれてくるのだと思います。