農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【またまた読書】

土曜日は、博多で一日研修。
例の、「地域のリーダーを目指す女性応援研修」。
目的地までは、JR。
各駅停車で40分ほど。
最寄り駅を8時半過ぎに出発する電車の座席はすでに人が座っていて、1両目運転席のすぐ後ろのスペースに立ち、本を読み始める。


「52ヘルツのクジラたち」 町田そのこ

主人公貴瑚(きこ)が、大分県の海の見える古い家に引っ越してくることから物語が始まるのだけれど、貴瑚がこの家に越してきた理由、「アンさん」とは一体何者なのか、雨の中あらわれた中学生、とにかく誰もがミステリアスで、ぐいぐいと本の世界へと引き込まれた。


しばらくして、はっと気が付いて顔をあげると、電車の扉が開き、「博多~、博多~」とアナウンスが聞こえてきて、慌てて電車を降りたくらい、夢中になった。

もちろん、帰りの電車の中でも本を開く。
帰りは快速だったから、時間を意識しながら読み進める。
そして、帰宅後、早々に片づけや入浴を終わらせて、布団に潜り込んでページをめくった。
本を読むのは遅い方で、数日かかってやっと1冊の本を読み終わるのだけれど、この本は違って、1日で読み終わるくらい、夢中になって読んだ。


52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラのこと。
広い広い海。大海原の暗く深い海で、誰にも届かない、届けられない声で鳴くクジラ。
想像を絶する孤独。

世界で一頭だけのクジラであるはずなのに、本の題名は「52ヘルツのクジラたち」。
「クジラたち」とは、きっと私のことで、そして、わたしたちのこと。
発しているのに誰にも届かない想いがあって、逆に、届けたいのに届けられない想い、発せられない想いを抱いている。だから、夢中になって読んでしまったのだと思う。
この「孤独感」は、他者への「理解」「やさしさ」「希望」となっていく、そう信じさせてくれる一冊だった。


この本、実はおまけがついていて、読み終わった後、そのおまけに気付く人と、気付かない人とがいると思う。私は、このおまけのことを知っていたから辿り着けたのだけれど、なんの情報もなく辿り着けた人は、作者の「粋なはからい」を受け止めることができた人なんだろうなと、勝手に判断している。
なんだかそれは、正直、嫉妬に近いような気持ちで、自分がちょっとおもしろく思えた。