農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【伝わらなかった私の想い】

仕事で放課後の小学校へ。
公用車が出払っていたので、私用車で。

駐車場で車を停めていたら、右後方に鈍い音。
びっくりしてそちらを見ると、野球のボールが転がっている。
ああ、ボールが当たったんだ。子どもじゃなくてよかった。
安心して車を停めて、一応車を眺めてみる。傷もへこみもない。
それにしても、駐車場とグラウンドの間には、高い高いフェンスが張ってあるのに、どうしてボールが飛んできたんだろう・・・不思議に思っていると、野球少年がボールを拾いにやって来た。
こちらをちらちら見るだけで、何も言わない。
「当たったけれど、車はどうにもなっていないから大丈夫だよ。」
それでも何も言わない。そのまま戻ろうとする。
「何か言うことは?」
「・・・投げたの、僕じゃないし・・・」

このまま子どもが去っていくのを知らん顔することもできたし、私も目くじら立てて問い詰めることもないかなと思ったのだけれど、こどもだからこそ、大切なことを伝えないといけないのではないのかなと思い、そこらへんにいた野球少年に事情を話す。
誰も何も言わない。それどころか、
「俺じゃないし。」
とか、
「お前が投げて〇〇がどうこうして・・・」
とか、お互いが言い合う。
そうしたら、少し離れたところでキャッチボールしていた年上の野球少年2人がやってくる。「ボールが車にあたった」っていうと、
「俺ら関係ないけ、戻ろうや」
とすぐにその場を去っていく。

グラウンドの向こうでピッチングマシーンを扱っていた監督らしき人が、
「お前たち、そこでなんしよるんや!!はよ、守備につかんか!!」
と怒鳴り上げる。
そうやって、みんな散り散りに私の前から離れていった。




私は、ボールが当たったことに腹を立てているのではない。
わざとぶつけたなんて思ってもいない。
野球少年たちにとって、予想だにしなかった出来事が起きただろうことも簡単に想像できる。それでも、やっぱり、
「すみません、大丈夫ですか」
と、言えなかったこと、言おうとしなかったこと、チームメイト全員が保身に走っていることに腹を立てているのだ。
そのことを野球少年にも伝えるけれど、誰もわかってくれなかった。
私の伝え方がわるかったのだろうか。
あの時、野球帽を脱いで、「すみません」とちょっと頭をさげてくれたのなら、
「暑いけど、練習がんばってね」
って笑顔で返すことができたと思う。
私が求めていたのは、難しいことだったのだろうか。
どんなに野球がうまくなっても、どんなにチームが強くなっても、礼節を欠いているのなら、それは本当に強い選手、強いチームとは言えない。
なんとも消化しきれない気持ちを抱えたまま校舎へと向かった。


私は自分の子どもたちにいつも言っている。
にっこり笑って挨拶ができ、「ありがとう」と「すみません」がちゃんと言えるのなら、人生はきっとうまくいく。
私はこのことを体験的に理解できるようになるまで、ずいぶんと時間がかかり、ずいぶんと回り道をしてきたように感じている。
簡単にみえることほど、実は難しいのかもしれない。