農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【俵万智の歌に出会う】

時々発症する「活字欠乏症」。
本を読むのなら、家にある積読状態の本に手を伸ばせばいいのに、浮気性なのか、無いものねだりをする性質なのか、目新しい本を求めて、飯塚市の図書館にふらふらと出かけてしまった。

ブログで紹介されていた本で読みたいと思った本を、自分の手帳の「ブックリスト」に書き込んでいる。
今回、図書館で、今読みたい気分の本を選んで検索にかけてみたけれど、残念ながらヒットしなかった。
それで、先日、図書館で借りたい衝動にかられた、本屋大賞にノミネートされていた
津村記久子さんの本を借りることにする。

 

mosgreen3111.hatenablog.com

 

もうすでに、本屋大賞ノミネート作家コーナーは終了していたので、本棚の「た」行を探して棚と棚の間をうろうろする。

津村記久子さんの本が並ぶ棚を見つけ、どれにしようかと悩みながら、ふと視線をずらすと、俵万智さんの本が並んでいるのが目に映る。
そして、SNSでたまたま見かけた俵万智さんの歌に衝撃を受けたことを思い出す。

言の葉を ついと咥(くわ)えて 飛んでゆく 小さき青き鳥を忘れず

このままで いいのに異論は 届かない マスクの下に唇をかむ

 

おそらく、ツイッターのロゴやブランドが変わった時に詠まれた歌と思われるのだけれど、これが秀悦すぎて、さすがだと唸ってしまった。
その後、母の日に詠んだという歌もSNS上で私の元に届く。

 

「短所」見て 長所と思う 「長所」見て 長所と思う 母というもの

息子から 連絡はなく 母の日は 私が母を 思う日とする

 

「あぁ、本当にそうだよなぁ。」
私も同じように感じてたんだーというようなことをたった31文字で表現するなんて、本当にスゴイことだ。
この2つの出来事があってからは、それまで俵万智さんの歌集も本も手に取ったことはなかったけれど、これはぜひ読んでみたいと思っていたので、「た」行の棚にやってきたことは何かの縁だと思い、借りてみることにした。


借りた本


ライトな感じで読みやすそうな本ばかりだけれど、本を読むことが癒しになっているので。今はこれでいい。

俵万智さんの「たんぽぽの日々」から手に取っている。
子育てをテーマにした歌集。
歌とその歌にまつわるエッセイと、写真とが添えられていて、エッセイを読むことで歌の理解が深まるし、静かで優しい写真が気持ちを柔らかくしてくれる。

叱られて 泣いてわめいて ふんばって それでも母に 子はしがみつく

たんぽぽの 綿毛を吹いて 見せてやる いつかおまえも 飛んでゆくから

振り向かぬ 子を見送れり 振り向いた 時に振る手を 用意しながら

 

子育て中にこの歌集に出会っていたのなら、子どもをみつめるまなざしはもう少し違っていたかもしれない。下手な育児本よりもずっと親近感と安心感を与えてくれる。

 

「自分の時間」という宝物があってそれを子どもに奪われるのではなく、なんてことない自分の時間を宝物に変えてくれるのが子ども


こんな尊いことを、優しくさりげなく、そっと気付かせてくれる。

こどもが生まれてからいろんな出来事があったけれど、母親として抱くいろんな感情を、私の代わりにぴったりな言葉で表現してくれている。
そして、子どもたちが、もう十分大きくなって見上げるほどになっていても、やっぱり今が一番かわいくて愛おしい。そんなふうな気持ちにさせてくれる本だった。

さて、次はどれを読もうかな。
こうやって迷ったりすることも、なんだかちょっと、しあわせな気分。