農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【『自転しながら公転する』を読むー殻を破り大切な人にこそ本音で話そう】

夜中に目が覚める。
時計を見ると、3時をすぎたところ。
今日は11時から予定があるけれど、早起きは必要ない。
もう一度ゆっくり眠ろうと、ぬくぬくの布団に潜り込んで目をつむる。
どうゆうわけか、全く眠れそうにない。
しばらく寝返りを繰り返したのち、寝るのをあきらめて、枕元の本に手を伸ばす。
スマホのライトをつけて、眩しくないように、でも文字が読めるように角度と体勢を整えて、本の世界へ。
朝まで眠くなることなく、一つの物語を楽しんだ。
読んだ本は、山本文緒著『自転しながら公転する』


重度の更年期障害を患う母の看病のため実家に戻ってきた32歳の都(みやこ)。
アウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、寿司職人の貫一と付き合いはじめるが、彼との結婚は見えない。
職場は頼りない店長、上司のセクハラと問題だらけ。
母の具合は一進一退。
正社員になるべき? 運命の人は他にいる?
答えのない問いにぐるぐると思い悩みながら生きる都。
それは、誰かの心の叫びであり、私の問題でもある。

この物語は、自分で自分を縛り付けている呪縛からの解放と精神的な自立の話だと思った。
経済的に自立することはもちろん、精神的に自立するということ。
自立するということは責任が伴う。
打算的で狡猾的な主人公の言動。
自分の不安を相手に投影し、他者を心配するふりをして、自分を守ろうとするずるさ。
主人公だけではない。
主人公の母親も、父親も、恋人も、職場の上司も、それぞれ自分の言い分、立場でのみ人を決めつけ、定め、そして微妙な距離を取る。
責任が伴わないかかわり方ばかりを選び、それらしいもっともな理由を並べて無意識に逃げている。
でも、その背景にあるのは、呪縛からくる自信のなさであり、不安に感じていることが投影されている、、、そのことに気付こうともしない。
結婚観も学歴も、男の役割も女の役割も、思い込み、呪縛からくる自分自身への不自由さと相手の自由を奪うことにほかならない。

でも、ぐるぐると自転しながら、みんなだんだんと気付いていく。

何かに拘れば拘わるほど、人は心が狭くなっていく。
幸せに拘われば拘わるほど、人は寛容さを失くしていく。

夫や世間からかけられる圧力ばかり気にしていたが、自分がかけていた圧力には無自覚だった。



そして、都は叫ぶ。

『結婚なのかどうかはわからないけど、私はやっぱり誰かと連帯して生きていきたい。
そういう相手を探す!』


そうやって、気づき傷つきぶつかることで、優しさと愛おしさと、自分の本心にたどり着くことができる。
まさに、自転しながら公転する。

自転しながら、一体何の周りをまわっていたのか、、、それはぜひ、読んで確認してください。