農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【次男へ】

昨日の卒部コンサートでは、素晴らしい時間をありがとう。
いよいよ、部活を卒業する日を迎えましたね。3年間、お疲れさまでした。
特にこの1年間は、副部長として、部長を支え、仲間をまとめ、後輩たちの指導に心を配ったことと思います。

昨日、お母さんは、たくさんの保護者の方にお礼を言われました。あなたがやさしく接してくれたこと、あなたがとても頼もしい存在であったこと、そして、あなたのおかげでここまでこれたこと、、、。学校や部活動のことは、家ではほとんど話してくれないあなたでしたが、どの保護者の方も、あなたを褒めてくれました。嬉しくて胸がいっぱいになりました。



卒部コンサートの途中で、小学校の卒業を控え、「何部に入ろっかなー」と悩んでいたあなたの姿を思い出しました。
新しい世界、未知への挑戦、未来への期待に胸いっぱいなあなたの顔をよく覚えています。
中学校生活が始まり、いよいよ部活体験が始まると、迷うことなく吹奏楽部に通い続けましたね。
正式に入部届を提出するとき、あなたが吹奏楽部に入るなどとは、予想だにしていませんでした。家族にだれも楽器演奏ができる人がいないこと、音楽が身近に溢れている家庭でもなく、なにより、あなた自身が音楽に興味を持っていることなど、知りもしなかったからです。
今考えると、小学校高学年では、リコーダーが上手だと、先生やお友達に褒められていましたね。きっとそのことがきっかけの一つだったのかもしれませんね。

体験入部を終え、いよいよ楽器のパートが決まった日のことは忘れもしません。
新一年生の中でただ一人、どの楽器も器用に音を出すことができたあなたは、サックスにあこがれを抱いていました。たぶん、選ばれる自信も持っていたのでしょう。
それなのに、あなたに告げられた楽器は「ユーフォニウム」。
帰宅したあなたは、家族の問いに「ユーフォニウム」とただ一言吐き捨て、こらえていた涙を隠すことなく一直線に部屋に閉じこもったのでした。

それでもあなたは、毎日欠かさず練習に行きました。
入学して3か月後には、あのユーフォニウム胸に抱いて、先輩たちの輪に加わって音を奏でるあなたの姿をみて、とても誇りに思ったことでした。


副部長になってからは、思い通りにいかないこともたくさん経験したことでしょう。
ただ楽器を演奏すること、仲間と一緒に楽しい時間を過ごすこと、それだけでなく、副部長という責任、仲間を思うこと、支えること、役割を果たすことの大変さなど、多くのことを学ばせてもらいましたね。楽しかったことも、つらかったことも、思い通りにいったことも、思い悩んだことも、すべてのことが、きっとこれからのあなたの力となることでしょう。


卒部式では、演奏の合間に、3年生それぞれが、箱の中から番号の書かれたくじをひき、その番号の質問に答えるという形で、一人一人がインタビューに答えました。
あなたへの質問は、

吹奏楽に入部してからの3年間で、あなたのパートはどんな存在になりましたか?」

「はじめは知らない楽器であまり好きではなかったけれど、今ではとても大好きになりました。」

「どんなところが好きですか?」

「マイナーメロディがとてもかっこよくて、吹いていてとても気持ちいいです」

恥ずかしそうに、でも堂々と答えるあなたの姿を、にこにこしながら見つめました。


あなたが教えてくれた「ユーフォニウム」という楽器。
今では、よその学校の演奏でも、まず、ユーフォの存在を確認します。そして耳を澄まします。あなたが演奏するときは、心を空っぽに、ひときわ耳を澄まします。たくさんの音の中から、金管木管をつなぐ音、高音と低音をつなぐ音、全体を柔らかく、温かく導くユーフォの音を探すのです。
あなたの指の動きに合わせ、奏でられる音。全体が合わさって響き渡る音。
演奏会の度にあなたの成長を喜び、そのハーモニーに感動してきました。


昨日は、大きなホールではなく学校の体育館で、すぐ近くで演奏を聴かせてもらいました。あなたが「感動する!やっぱこの曲いいわ!」と言っていた「チンギス・ハーン」も、じっくり聴きました。

あなたのおかげで、お母さんも知らなかった世界の扉を開くことができました。そして、その世界をあなたと一緒に過ごせたことを嬉しく思っています。

これから先、あなたがどんな道を進もうと、お母さんは全力で応援するつもりです。どうぞ自信をもってあなたらしく歩んでいってください。
あなたが自分で選び、あなたが自分の手で開く扉の先にある未来が、明るい光にあふれていることをいつも願っています。