農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【山の恵み 涙の味】

隣町の田んぼには、イノシシやシカが出没するので、田んぼの周りをぐるっと、防獣フェンスで囲んでいる。
そして、田んぼの裏山から下りてくるけもの道に、狩猟免許を取得した旦那さんがくくり罠を仕掛けているのだけれど、今年の秋口から、わりとよくシカやイノシシがかかっている。

今年の田んぼ仕事は終わったけれど、動物が悪さしないよう罠はかけ続けていて、旦那さんは時々、仕事が終わった後パトロールをして帰ってきている。

そして、昨日。


「罠は一つなのに、イノシシが2頭いる。
暗くてよく見えないし、危ないので、明日の朝確認する。」

そんな連絡が届いた。

そして今日。



やっぱり2頭いる。
そして、罠にかかっているのは子どもの方で、そばにいるのがおそらく母親。
罠にかかったわが子をなんとか助けようと夜通しそばについていたらしい。
動物、しかもイノシシにも、そんなことがあるのだろうかと思いながら、母親を追い払い、罠にかかったイノシシの命をいただいた。
止めを刺すとき、母親は、子どもの声を聞いて2度戻ってきた。

旦那さんが肉を捌く手元を見ながら、そんな話を聴いた。

 


もも肉、脇腹、背中、ホホ肉、アバラ骨。
どれも200gずつくらいに切り分けて、ビニール袋に入れていく。
欲しいという人には譲り、今日の食卓には、トンカツで。
トンはトンでも、シシだから、シシカツになるのかな。
そんなことを考えながら、残りは冷凍庫へ。


柔らかいお肉を、かみしめながら、イノシシの命と母親の愛とをいただく。
美味しいのだけれど、ちょっぴり涙の味がしたように感じて、なんだか切なくなった。

 

ありがとう。
私の体は食べたもの以上のものでできている、そんな気がした。