農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【着物で散策~大川市~】

今日は着物仲間のお姉さま方と、大川市へ。
大川市は、福岡県の南部に位置し、俳優の陣内孝則さんの出身地。そして昭和初期から5000曲に及ぶ歌謡曲を作曲し、「古賀メロディー」で知られる古賀政男氏の出身地。

大川市はいまでこそ家具で有名な町なのだけれど、室町から江戸にかけての中世の時代は、有明海を望む廻船問屋が立ち並んでおり、盛んだった船大工の技術を生かして、家臣の生活のため、指物(家具)を作らせるようになったことが現在の「家具の町」の興りなんだそう。その細かい匠の技術は、現在「大川組子」として受け継がれ、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星」の内装にも採用されていて、細かく繊細な技術の美しさに感動しながら、組子の体験をしてきました。

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※大川組子に興味がある方は、こちらのサイトへどうぞ↓

大川組子(おおかわくみこ) | 大川伝統工芸の紹介 | 大川伝統工芸振興会公式サイト

 

次は、昔ながらのお酢屋さんへ。
榎津(えのきづ)と言われる地域に現存する一番古い民家「庄分酢(しょうぶんす)・高橋家住宅」へ。現在も住み続けながら、蔵では酢を作っていらっしゃる。案内してくれた亭主は14代目。400年前からこの地で酢を作り続けているのだそう。

 

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町家づくりの店舗兼自宅の奥には、黒酢醸造している甕が並んでいる。
よく見ると、3分の1程度は土の中。
酢は、お米を発酵させてお酒を造り、さらにそのお酒を発酵させることで作られる。
お酒の仕込みは寒い時期だけれど、酢の仕込みは秋のお彼岸の頃なのだそう。
甕にいれて和紙で蓋をしてむしろで保温して発酵させており、つんとしたお酢のにおいが一面に広がっておりました。

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黒酢の甕と通りを挟んだ反対側には、様々なお酢の樽が並んだ蔵があります。
ゆっくりと寝かせて発酵させた酢は、まろやかでとげがない仕上がりになるそう。
美味しい酢作りに欠かせないのが、家や蔵に住み着く目に見えない菌なのだそう。
そして、酢を醸造するための1枚板の大樽や竹を編んで樽を締める箍(たが)などというものは、よい酢作りのためには欠かせない道具であり、これらの道具と時間のおかげでまろやかな酢作りができるそうなのだけれど、こういった道具を作る技術も今は失われつつあるのがなんとも残念に感じました。

大きな樽に仕込む作業は、だいたい4人でまかなっており、ここでできたお酢を別にある工場に運び、そこで瓶詰やラベル張り、配送や営業をされているということでした。


今回訪れた大川市の小保(こぼ)・榎津(えのきづ)という地区は、小さな堀を境界に、江戸時代の有馬藩(久留米21万石)と立花藩(柳川12万石)の藩境の町だったそうで、住民のいざこざが絶えない地域だったそう。今は、地域住民と行政とが一体となって古い町並みと景観を残したまちづくりに力を入れており、今日案内してくださった観光ボランティアの方をはじめ、住民の方々もみなさん温かく迎えてくださり、とても楽しく散策することができました。

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こうやってみると、やっぱり、時間がかかるもの、丁寧さがうかがえるものにすごく心惹かれます。そして、それらに携わる人の暮らしを垣間見ることができて、小さな町並みだったけれど、みなさん、生まれ育った歴史ある街並みに誇りを持っていらっしゃるように見受けられるようすが、なんとも清々しく感じた旅となりました。