農繁期には、隣県に住む、義妹一家が手伝いに来てくれる。
義妹の夫さん、大手企業にお勤めの方なんだけど、
実は長年農業に憧れを抱いていたそう。
だから、何でも興味を持って積極的に手伝いに来てくれる。
畦の草刈から、種まき、田植え、稲刈り、もみすり。
米作りの大きな作業の時は必ず来てもらっている。
義母は、この先もみんなで力を合わせて農業を続けてほしいと願っている。
小さいうえに形の悪い田んぼをあちこちに持っている我が家にとって、
米作りの能率の悪さは頭の痛い問題。
だからこそ、加勢が多いほうがいいに決まってる。
でもね、迎え入れるほうは大変。
隣県からだから、寝泊まりするし、食事の準備も。
農業の仕事に加え、イエの仕事も増える。
3食10人前の献立を考えながら、買いだめし、
イエのことしながら、田んぼに行って作業する嫁の私。
血のつながる同士は、遠慮なしに言いたいことを言い放ち、
どこまで本気でどこから冗談なのかわからないようなやり取りを
私の目の前で繰り広げる。
やはり気力と体力と嫁の気遣いの消耗は半端ない。
だから、迎え入れる前は、正直、気持ちが憂鬱になる。
義父母と義妹と農作業に挟まれて
アレコレ調整して、様子を見ながら進めているから、
自分の都合なんて後回し。
米作りを楽しむ余裕なんて、まだまだ持てない。
せっかくのお休み、土日、連休。
自分の行きたいところに行って、
食べたいもの食べて、会いたい人に会って、
好きなことして、ゆったりとした時間の流れを感じて、
誰にも遠慮せず、何の心配もなく、自由に過ごしてみたい。
わがままで、ぐうたらな本来の自分を解放してあげたい。
これが正直な気持ち。
何度この気持ちを味わっただろう。
休みの間の仕事の見通しを立て、段取りをして、
急な予定変更にも柔軟に対応しながら乗り切る私の視線の先にあるものは、
太陽の光に揺れる稲穂とどこまでも広がる青い空と気ままに流れる白い雲。
そしてそこに集った家族の笑顔。
子どもたちの無邪気な笑い声。
つらい思いもきつい思いもするけれど、
結局私はこの景色を眺めることが好きなんだと思う。
この景色に喜びを見出しているんだと思う。
そうじゃないと続けられない。
憂鬱な気分の反対側に
小さな小さな喜びをひっそりと拾い集めて
やじろべいのようにゆらりゆらゆら
毎日、毎日、釣り合わせながら今日も生きている。