農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言

~仕事のこと、農作業のこと、家のこと、子どものこと、 何気ない出来事 ~

【自分の感受性くらい】

自分の感受性くらい


ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

――茨木のり子『自分の感受性くらい』より

 

 

この詩に出会ったのは、

長男を妊娠してた時だったか、出産した時だったか、

はっきりは覚えていなかったけれど、

山口県萩市に住んでいた時だったことだけは記憶してる。

 

ものすごく衝撃的で、ストレートに心に刺さった。

けれど、ぜんぜん痛くなくて、むしろあったかくなったこともを覚えてる。

私のことをちゃんとわかってくれて、

愛のある説教を受けたみたいで、背筋が伸びた。

 

この詩は、私が忘れた頃にさりげなく私の前に現れてくれる。

今日は、何回目だろうか。

 

20代前半でこの詩に出会っていたら、

たぶん反発してたと思う。

独り善がりで、今以上に思いやりがなくて、

自分が世界の中心で、思い通りに行くことが当たり前って威張ってた。

 

そんな私が、

うまくいかないことの原因が自分にあるってわかって、

自分の感情をコントロールしていくことについて考えて、

少し謙虚になった時、この詩がそっと私の前に現れた。

 

この詩に出会ってずいぶん経つけれど、

定期的に、なぜか私の目の前に現れる。

そして私はいつも、この詩に励まされ、背中を押され、

積極的にばかものになって、

自分の感受性くらい自分で守ろうと努力しているのである。